空の闘士　ヘルムート・ヴィック

 

第二次世界大戦中のヨーロッパ上空において、メッサーシュミットBf109を駆って闘ったドイツ空軍パイロット。最終階級は少佐。

撃墜スコアは５６機。

１００機以上の撃墜スコアを持つエースパイロットがあまたいるドイツ空軍の中で、５６機はいかにも少ない。。。

しかし、彼の撃墜スコアのほとんどは、イギリス空軍の精強なスピットファイア戦闘機。
「アッハトン！シュピットフォイア！（気をつけろ！スピットファイアだっつ！）」ドイツ空軍パイロットたちにこう云わしめ恐れられた、あの強敵である。撃墜スコアが少ないのは１９４０年に戦死を遂げたため。

かの第２戦闘航空団「リヒトホーヘン」に所属し、１９３９年１１月初撃墜を果たし、対フランス戦で急激に撃墜スコアを伸ばす（１４機）。

１９４０年夏。迎えた強敵イギリス空軍との闘い「バトル・オブ・ブリテン」。
「戦いで死ぬのがオレの望みだっつ！」普段からこう云っていた彼の闘志はすさまじく、かのアドルフ・ガーランド、ヴェルナー・メルダースらとトップエースの座を争うようになる。
１９４０年１０月には功績を買われ２６歳の若さで少佐に昇進。
さらに、第２戦闘航空団司令官の職に任じられる（当時最年少の航空団司令官）。
そしてついに、５６機の撃墜を果たし、さきの二人を抜きドイツ空軍のトップエースの座へ。。。。。



しかし、１９４０年１１月、作戦行動中有利な態勢から攻撃を掛けてきたイギリス空軍との戦闘において撃墜され、海上にパラシュート降下をさせられる。

あわてたのは、空軍上層部。英雄となった彼の喪失を恐れ、飛行禁止の命令書を発していたのである。
命令書が届いたのは彼の出撃直後。
翌日、第２戦闘航空団全機が出動し、海面スレスレの捜索活動がおこなわれたが、ついに彼の姿は発見できなかった。。。。



ドイツ空軍上層部は異例の措置として、敵、イギリス軍に対し電文にて照会を行う。

「ヘルムート・ヴィック少佐は貴軍の捕虜になっていますか？」

イギリス側より折り返し捕虜になっていない旨丁重な回答があり、こうして彼の戦死が認定された。

折りしも時期は１１月の終わり。。。。海上での凍死は免れなかったのだろう。

「戦いで死ぬのがオレの望みだっつ！」と生前云っていた彼の事。また、相手が将官クラスの人間であっても納得できない事については引き下がらない頑固なところもあったという彼の事。飛行禁止の命令を素直に聞き入れたとは思えない。命令には渋々従うが、事ある毎に「飛ばしてくれ！」と食い下がったに違いない。

彼らしい最期だったのではないか。。。

残されているヴィックの生前の写真。制服の襟の階級章から、少佐に昇進後のものである事がわかる。
笑みを浮かべてはいるが、タカのような目が精悍さを思わせる。ヴィックの写真は何枚か残されているが、すでに２０代半ばにして頭髪が物凄く薄いのが印象的だった。戦闘機乗りという職がいかに神経をすり減らす過酷なものであったか。。。。

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